福岡eドア・会社研究
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オフィスレス
会社にオフィスは必要か





先日、ある方が、僕の会社、すなわち翻訳会社ソリュテックのオフィスに関して聞いてきました。 ざっと、以下のようなやりとりでした。


会社のオフィスは東京と福岡の両方にあるんですか?
確かに僕の会社のオフィスは東京と福岡の両方にあるけれども、一般的にイメージするようなオフィスとはだいぶ違うな。

社員はほとんどオフィスにいなくて、自分の好きな場所で仕事している。

仕事は、インターネットで来て、それを処理して、その結果をインターネットで返すから、インターネットがつながる環境だったら、地球上、どこに居てもいいわけです。
なんか未来的だけど、変わってますよね。
確かにそうですね。 5年前くらいまでは、うちの会社も普通の会社と同じようなオフィスだったんですよ。 オフィスに社員が集まって仕事をしていました。

ところが、インターネットの発達で、海外にいるフリーランスの人とか、国内でも離れた所にいる人とかを使うようになって(結局、その方が質が良い仕事ができるということなんです)、オフィスがガラガラになってしまった。

それで、そのオフィス・フロアは賃貸で借りていたものだったので、高いコストをかけてフロアを借りる必要は無いと思って引き払ったんです。

現在は、東京と九州の自宅がそのままオフィスとして使えるようになっていますが、実質的に、そこに人が集まらなくても支障無く仕事が出来ていますから、以前のようにオフィス・フロアを借りて、そこに社員が通うようなスタイルにする必要性は感じていません。

ですが、オフィスに人が集まって仕事をするスタイルが適しているような仕事が生じたら、また、オフィスに人が集まるスタイルも復活すると思います。


ま、経営者っていうのは、普通の人と考え方が違いますからねえ・・・。 当たり前のことをしてたらダメなんですよ。もし、僕の会社が急成長したら、僕のやり方がパイオニア的な方法として注目される訳だけど、僕が普通にやってたら何の面白みも無いですから。



会社のオフィスの役割とは

会社のオフィスの役割とは何だろう? 列挙してみた。
  • 会社所在地としての役割
  • 働く場所としての役割
  • 接客場所としての役割
まず、会社所在地としての役割であるが、会社の所在地は会社にとって重要である。 これが無いと会社を設立することができないし、郵便物だって届かない。 いくらオフィスレスの会社であって、実際に働く場としてのオフィスが無くても、会社である以上、書類上だけでも「ここがオフィスですよ」と言える場所を持っていることになる。

次に働く場所としての役割であるが、一般的にオフィスという言葉から連想されるのがコレである。 机、電話、パソコン、コピーマシンなどがあって、社員が作業を行う場所だ。 社員同士が直接会って会話などしたり、資料などの情報を交換したり、会議室がある会社では、そこで会議が行われたりもする。

そして、接客場所としての役割。 今は電子メールでやりとりをする時代なので、取引先の人や、お客さんが直接会社に来ることは少ないが、しかし、それでも応接室を持ち、接客できるようにしている会社は少なくない。


会社のオフィスの危険性

現在、新たな面からもオフィスレスが注目され始めている。

それは、自宅勤務が、新型インフルエンザなどの伝染型ウイルスの伝搬を抑止する効果があるからだ。

会社に通勤する場合、通勤過程で混んだ電車に乗ったり、雑踏の中を歩いたりしてウイルスに感染するリスクにさらされる。また、会社のオフィスでも、そこに勤務する人の中の誰かがウイルスを保有していれば、そこでもウイルスが体内に侵入する機会は高い確率で存在する。

つまり、会社のオフィスまで通勤し、そこで社員が集まって仕事をするスタイルは、伝染性ウイルスのパンデミックを助長する危険なスタイルなのだ。

一説によれば欧米の会社では、自宅勤務で業務遂行できる体勢が日本の会社より進んでいるとのこと。 日本の会社も、殺人ウイルスの広がりを防止する対策が急がれていると言えよう。


建物が立派な会社は業績が低下する

これは、僕が過去に肌で感じたことなので信憑性があるかわからないが、僕が起業する前、かつてサラリーマンとして勤めていた会社は、都心に人目を惹くユニークな外観の立派な本社ビルを建てたが、その後、業績が悪化し、そのビルを手放す羽目となった。 減損会計により本社ビルを保有せずに賃貸で賄う会社が多いとは言え、この会社のように自社ビルを手放して、それを賃料を払って借りるというようなことが実際に起こった訳だ。

確かに意匠性が高い立派なビルは宣伝効果もあるだろうし、ステータス・シンボルにもなるだろうが、それらのメリットを超えるデメリットがありそうに思える。 子供の頃から、世界的な大企業であるトヨタ本社が「ちゃちでボロイ」ことを不思議に思っていたが、今は、その理由がわかるような気がする。 質実剛健だからこそ、世界的な大企業になり得たということなのだろう。 どうも、トヨタ発祥の地というのは、質実剛健ということを重んじるようで、その文化がベースにあるようだ。 トヨタには豊田綱領なるものがあり、その1項目に「華美を戒め、質実剛健たるべし」というのがある。なるほど、トヨタ本社を豪華なビルには出来ない訳だ。


追記: 上記記事を書いた後の 2005年、トヨタ本社は青いガラス張りの美しい立派な本社ビルを完成させ、翌 2006 年には名古屋駅の近傍に毎日新聞社と共同で 「ミッドランドスクエア」 なる地上47階、地下6階の超高層ビルを完成させた。

しかし、2008年の後半からの車離れおよびアメリカ発の超不況により売上・利益が大幅に低下し、従事していた大量の労働者が(雇用形態にかかわらず)職を失い、周囲の会社や自治体の財政にまで苦境に陥れた。

この、トヨタショック とも呼ばれるメルトダウンを即、美しい立派な本社ビルを完成させたことが原因とは言わないが、ここ最近、あれだけの大企業でありながら、あまり面白いものが出てきていないことを考えると、もしかしたらハングリー精神を削ぐなどの間接的な影響というのはあったのかもしれない。








会社のオフィスレス化

インターネットが本格普及しだした頃から、オフィスそのものを不要にする、もしくは分散小規模化するオフィスレス時代が到来すると言われていたが、現実的には、オフィスレスに踏み切れる会社というのは少ない。 せいぜい、一部の会社で、社員が自分の机を持たないフリーアドレスオフイス(ノンテリトリアルオフィス)を採用している程度であると考えられる。

2007年現在、日本の景気も回復し、多くの会社は、何気なく、従来通り、オフィスに社員が来て仕事をするというスタイルで満足しているように見受けられる。 なにせ、既存のシステムを変えるのは大変な冒険だし、労力が必要だから、簡単には変わらない。それに、周りの目というのもある。 オフィスレスにすると 「怪しい会社」 とか 「この会社、倒産するんじゃないか」 とか受け取られかねない。 だから、今のところ、オフィス需要は好調のようだ。

しかし、ひとたび大きな不況の波が来たら、状況は一変するだろう。 なにせ、オフィスレス化のメリットは大きい。 フロアコストが不要になるのはもちろんのこと、通勤時間・通勤コストが不要となるのだ。 しかも、ノートPCに国内どこでも無線でインターネットができる通信カードを挿しているようなモバイル環境が整備されている状態まで持って行けば、機動力だって今までの比ではない。



追記: 2008年後半からの景気悪化で、予想通り、オフィス離れが加速。 空室率アップで、新規のオフィスに至っては借りてがつかないそうだ。つまり、上記のことが、実際に起こったということになる。

それにしても、、オフィス離れが加速すれば、オフィスビルも不要となってくるわけで建設会社の仕事も減ってくる。 ただでさえ公共事業削減の波で建設会社の仕事が減っているところに、この状況が重なった今、建設会社の倒産は史上空前と言っても良い状態で、目も覆いたくなる惨状だ。

優秀な技術を持った会社まで倒産し始めており、さすがに、そうれはまずいと感じる。

僕の会社の場合・・・

僕の会社 「翻訳会社ソリュテック」 も、昔、立派なビルに入居していた。 通行量の多い国道の交差点という目立つ場所に建つ、真新しいビルの1階と2階を使い、華々しく活動していた。 これには優秀な社員を集めたいという狙いがあった。 当時は、まだ、創業間もないベンチャー企業であり、優秀な社員を集めるには、それなりの魅力が必要だった。

しかし、結局、途中で、それは無駄な事だと言うことに気がついた。 そもそも、優秀な人材などというものは絶対数が少ない訳だし、それらの人材は既にそれなりの会社に就職し落ち着いているか、学生であれば、それなりの会社を目指して就職活動を行う訳だから、当時の僕の会社のような、創業間もないベンチャー企業に就職したいという奇特な人は皆無に等しかった。

そして、なんだかんだしているうちに平成不況が到来。 これにより業績が低迷。 大家さんと交渉してフロアの賃料を下げてもらったが、それでもフロアの賃料という固定費は経営上の大きな負担で、最終的には、立派なオフィスは不要であると結論付けた。

建物が立派な会社は、社員の無駄使いも多いように感じる。 自然と意識の違いになって現れてくるようだ。 自分のことにはケチな人も、会社の電気、水、コピー、文房具、備品などなどとなると、気にせずに使ってしまう社員の何と多いことか。 また、それをコントロールしようとすると、このコントロール自体も人件費などのコストがかかるのである。

小さいことかもしれないが、今の会社というのはギリギリの所で生きるか死ぬかが決まるような所があって、もし、それらを放置していれば、シロアリが建物を倒すのと同様に会社も倒れるのである。

そして、ビジネスがうまく行っている時はまだ良いが、不況などで業績が下り坂になった時に、そのフロアコストが経済的にも、そして、経営者にとっては精神的にも大変な重荷になる。 このとき、経営者の胃の中は、荒れ放題に荒れる訳だ。

そうならない一番の理想的な道は、会社の社屋を持たないこと、つまりオフィスレスなのだ。

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